下肢静脈瘤手術 VARIX

下肢静脈瘤

当院血管外科では下肢静脈の診断、治療も行っています。
末梢血管用のエコー検査(ドップラーエコー)を用いて、丹念に壊れた(不全となった)静脈を見つけ、主にレーザーファイバーを用い血管内治療で、針を刺すだけの小さな傷で再発の少ない手術を行っています。当院で使用している“波長1470nm ELVeSレーザー装置”は保険適応です。

下肢静脈瘤の原因は?

血液は心臓というポンプで押し出され、体の隅々に流れてゆきます。では足に届いた血液は重力に逆らって、どのように静脈を上って心臓に戻ってゆくのでしょうか?静脈には血液が逆流しないように弁が付いていて、脚の筋肉が動いたときに静脈を圧迫して血液を順次上に押し上げてゆくのです。深いところにある静脈(深部静脈)は筋肉に囲まれていますが、皮膚の下の浅いところの静脈(表在静脈)は周囲に筋肉がなく、血液が戻りにくいのです。妊娠、肥満、立ち仕事などで、静脈に圧がかかると弁の合いが悪くなり、壊れ血液が下腿に逆流しうっ血が始まります。これが静脈瘤の原因です。

下肢静脈瘤
下肢静脈瘤

下肢静脈瘤の治療

脚のうっ血が起きると下記のような症状が出ます。1の外見的な凸凹だけでは手術は必ずしも必要ではありませんが、2以下の症状が出現し、症状がすすむほど治療の必要性が増します。
症状が軽い場合は理学療法や、弾性ストッキングを用いた外部から圧迫することでうっ血を取る保存的治療で十分な場合もあります。しかし、皮膚炎や色素沈着を起こすようになると保存的療法では不十分です。

足のうっ血による症状

  • 見た目の凹凸
  • 脚のだるさ・”こむら返り”
  • 血栓性静脈炎(静脈瘤の中に血栓のしこりができて、赤くはれて痛む)
  • 皮膚炎・かゆみ
  • 色素沈着・黒ずみ
  • びらん・潰瘍形成

治療の目的は、逆流を止めて脚の“うっ血”を直すことです。従来、壊れた静脈を針金を通して引き抜く手術(ストリッピング手術)が最も根治的と言われていましたが、それと同等の効果をレーザーで内側から静脈を焼くことで実現したのが、下肢静脈瘤血管内焼灼療法です。レーザーで焼くのは下腿の凸凹した静脈瘤でなく、弁が壊れて逆流を起こしている表在静脈です。針を刺す小さな傷で、低侵襲で安全にできる治療です。壊れた静脈は皮膚の下を走る表面の静脈であり、この静脈を焼きつぶしても筋肉の間を流れる太い静脈が残っており、脚の血流状態には問題ありません。

またレーザー手術は壊れた静脈の逆流を止める手術ですが、逆流が止まっても下腿の拡張した静脈のこぶは膨らみが小さくなっても残ります。その部分は2〜3mmの小さな傷で瘤となった静脈を切除する“スタブ・アバルジョン”という方法できれいにします。あるいは後日、薬剤を瘤の中に注射して瘤をつぶす”硬化療法”を行うこともあります。

壊れて逆流のある静脈にカテーテルを挿入して内側からレーザーで固める図
波長1470nm ELVes レーザー装置

静脈瘤があっても、必ず手術が必要ではありません。超音波検査で逆流の状態を詳細に把握し、症状との兼ね合いで決定します。また、レーザー手術は安全な手術ですが手術後早期の血栓の有無に注意する必要があり、専門的な知識が必要です。血管外科の専門医として活躍してきた経験を活かし、適切な治療法を提示します。まずはお気軽にご受診・ご相談ください。

下肢静脈瘤手術の大まかな流れ

診察
多くの場合、静脈瘤は下腿部分が主ですので、膝から下を診てもらうつもりで受診されます。しかし前述したように、静脈瘤の原因は太ももの付け根にあることが多く、足の付け根からつま先まで、また膝の裏の診察も必要です。
全体像を把握するためのエコー検査はかなりの時間がかかるため、お電話で予約されることとお勧めします。予約なしの受診の場合は、詳しい検査は後日となることがあります。
また、診察は立位に近い形で腰かけて脚の付け根から足全体を診ます。適切な服装でお越し下さい。
検査・診断
超音波(エコー)検査で下肢静脈の状態、弁が壊れて逆流があるか観察します。
リンパ浮腫、整形疾患、むずむず症候群、2次性静脈瘤などとの鑑別が必要です。また血栓の有無を調べるため血液検査やその他の検査も併用する場合もあります。
治療法の決定
症状の有無・程度、検査の結果を総合して治療法を提案します。症状が軽く手術の相対的適応の場合は、弾性ストッキングによる対症療法でしばらく様子を見る場合もあります。適応と考えられれば低侵襲の血管内レーザーによる治療法を行いますが、静脈瘤の程度、広がり、逆流の部位などを総合的に判断して、注射で固める硬化療法、根本で静脈を縛る高位結紮、静脈を除去するストリッピング手術などをおすすめする場合もあります。
治療
静脈瘤治療は基本的には日帰り手術で行います。レーザー治療の場合、当日は包帯の上に弾性ストッキングをはいて圧迫した状態で帰宅します。翌日に静脈の根もとに血栓ができていないかエコー検査をします。
1週間後に再度診察し問題がなければ、1〜3ヶ月後に再診させていただきます。弾性ストッキングは可能であれば1か月程度は装着していただきます。

担当医師紹介

村川 眞司